王兵(ワン•ビン) 監督特集 2021 in 金沢           9/18(sat)〜9/24(fri)

「中国の国家や歴史を語る時、そこからこぼれ落ちてしまう市井の人々、存在さえ認められないような人々とその人生」を見つめ、いま、世界映画の最先端に位置する監督ワン・ビン。本特集では、中古のデジタルカメラで映画が世界と対峙した衝撃的な第1作『鉄西区』をはじめ7作品を上映、「21世紀の映画作家」ワン・ビンの創作活動を辿ります。

 

上映に合わせ、土屋昌明氏と柳下毅一郎氏を迎えて『死霊魂』をめぐる歴史的な問題を読み解くトークイベントも開催。また、ワン・ビン作品を日本で配給するムヴィオラ代表の武井みゆき氏とシネモンド代表の土肥悦子による映画配給とミニシアターを語るイベントも開催します。

 

 ※新型コロナウィルス感染拡大防止のため日程や内容を変更する場合があります。

【上映作品】

死霊魂⑴ [2h46]|死霊魂⑵ [2h44]|死霊魂⑶ [2h56]|鉄西区⑴ [4h]|鉄西区⑵ [2h55]|鉄西区⑶ [2h10]|無言歌 [1h49]|鳳鳴 中国の記憶[3h04]|三姉妹 雲南の子 [2h33]|苦い銭 [2h43]|収容病棟 [前編2h02・後編1h55] ※休憩あり

 

 

●料金通常通り ※招待券・オフィシャルパスは使用不可

●トーク①券(土屋氏×柳下氏):¥500

●3回券(¥3,300)あり  ※複数人での使用可


鉄西区

铁西区|1999-2003年|中国|545分(第一部「工場」240分|第二部「街」175分|第三部「鉄路」130分)監督・撮影・編集:ワン・ビン

 

日本占領中に設立され、大規模な工業地域に変貌していった中国東北部瀋陽の鉄西区。現在は廃れゆくこの地域を三部構成の中に描き出した超長編ドキュメンタリー。廃虚となっていく工場や街、変化を余儀なくされる人々、刻々と過ぎゆく時の流れ。地域を限定し長い時間をかけて記録することで中国社会が抱える現実をも浮き彫りにする。各地のドキュメンタリー映画祭でグランプリを総なめにし、ワン・ビンの名前を世界に轟かせた伝説的作品。

 

 

 

 

 

 

鳳鳴(フォンミン)─中国の記憶

2007年|フランス・中国|184分

監督・脚本・撮影:ワン・ビン

 

1950年代以降の反右派闘争や文化大革命の粛正運動で数々の迫害を受けた女性・鳳鳴(フォンミン)。1974年に名誉回復されるまでの約30年に及ぶひとりの女性の物語が、細部にわたって詳細な記憶で語られる。赤い服を身にまとい、約3時間のあいだカメラに向かって語り続ける老女の姿に、中国現代史と映画の可能性が同時に交差する感動作。2007年のカンヌ国際映画祭公式出品、山形国際ドキュメンタリー映画祭では大賞を受賞。


死霊魂

2018年|仏・瑞|506分(第1部166分|第2部164分|第3部176分)監督・撮影:ワン・ビン

 

1950年代後半、中国共産党が主導した〈百家争鳴〉キャンペーンにのせられ自由に発言した人々が「反動的な右派」として粛清された。55万もの人々が再教育収容所へ送られた「反右派闘争」。中国全土の大飢饉も重なり、収容所は大量の餓死者が続出する地獄と化した。生存率10%とも言われた収容所から生き延びた人びとが、半世紀以上の時を経てカメラの前で語る体験の数々。12年をかけて撮影された120人の証言を、8時間に及ぶ作品として完成させた集大成的作品。山形国際ドキュメンタリー映画祭で大賞と市民賞をダブル受賞。

無言歌

夾辺溝|2010年|香港・フランス・ベルギー|109分  監督・撮影:ワン・ビン 出演:ルウ・イエ、リェン・レンジュン、シュー・ツェンツー

 

1960年、日本が高度成長期を迎えた頃、ゴビ砂漠の収容所では、世界の誰にも知られぬまま人々が死に向かっていた…。文革の嵐の前におきた「反右派闘争」の悲劇を描く、ワン・ビン初めての長編劇映画。その題材の衝撃とともに、轟々と鳴る風と砂の饗宴、闇に射し込む光の美しさに、人間と苛烈な自然とが織り成す残酷と美を目の当たりにし、見る者は言葉を失うだろう。歴史に飲み込まれた名もなき民の姿に、人間の尊厳を見いだす傑作。


三姉妹  雲南の子

2012年|フランス・香港|153分  監督・撮影・編集:ワン・ビン

 

中国最貧困と言われる雲南地方の山間の村に暮らす10歳、6歳、4歳の幼い3姉妹は、母親が家出、父親は出稼ぎに行ったため、長女が下の子の面倒を見ながら家畜の世話や畑仕事に一日を費やし、子どもたちだけで暮らしている。標高3200mのやがては消えていく貧しい村で、たくましく生きる少女たち、そのエネルギー、孤独、そして尊厳…。ベネチア映画祭オリゾンティ部門グランプリほか数々の映画祭を深い感動で包んだ驚嘆の一作。

苦い銭

2016年|フランス・香港|163分 監督・撮影:ワン・ビン

 

雲南省出身の少女シャオミンは、縫製工場で働くため、遠く離れた浙江省湖州へと向かう。そこは出稼ぎ労働者が住民の80%を占める街。朝から晩まで働いて、ただ働いて。それでもそこには胸に響く一瞬がある…。14億が生きる巨大中国の片隅で、1元の金に一喜一憂する彼らの人生を想う。ドキュメンタリーにも関わらず、ヴェネチア映画祭で脚本賞を受賞。劇映画以上の感動と、ずっと見ていたくなる面白さ。カメラの存在を消す天才ワン・ビンならではのマジックが炸裂した傑作。


収容病棟瘋愛|2013年|香港・フランス・日本|237分(前半122分/後半115分)※途中休憩あり 監督・撮影:ワン・ビン

 

精神病患者が1億人を超えたと言われる中国で、隔離された精神病院に3カ月密着。そこには暴力的な者、非暴力的な者、法的に精神異常のレッテルを貼られた者、薬物やアルコール中毒の者、さらには、政治的な陳情をした者や「一人っ子政策」に違反した者までもが、“異常なふるまい”を理由に「収容」されている。社会から隔絶され「存在しない」ことになっている人間たちの、誰も耳を傾けることのない、愛を求める声…。スクリーンと客席の境を消してしまう“ワン・ビンの距離”、そのカメラが記録した人間そのものの姿。

ゲストトーク① 9/18(土) 20:00~21:00「『死霊魂』と王兵が捉えた中国」

土屋昌明|専修大学教授

 

1960年神奈川県生まれ。専修大学国際コミュニケーション学部教授。編著に『ドキュメンタリー作家 王兵 現代中国の叛史』(ポット出版プラス)、『文化大革命を問い直す』(勉誠出版)、共訳書に廖亦武『銃弾とアヘン』(白水社)、『北京1966 フランス人女性が見た文化大革命』(勉誠出版)。王兵『死霊魂』について「読書人WEB」に金子遊・鈴木一誌との鼎談「観るものに問う映像」あり。中国古代文化にも興味がある。


柳下毅一郎|翻訳家・映画評論家

 

1963年大阪府生まれ。英米文学翻訳家。映画評論家。訳書に『クラッシュ』(J・G・バラード、創元推理文庫)、『悪趣味映画作法』(ジョン・ウォーターズ、青土社)、著書に『興行師たちの映画史』(青土社)、『ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判』(洋泉社/文春文庫)など。知られざる日本映画の世界を探求する〈皆殺し映画通信〉シリーズをウェブ連載し、またカンゼンより刊行している。


ゲストトーク② 9/24(金) 19:10~20:10「映画配給とミニシアター」

武井みゆき|ムヴィオラ代表

 

東京都生まれ。2000年に映画会社「ムヴィオラ」を設立。当初は宣伝中心だったが、現在はミニシアター系作品を年間4〜6本配給。ワン・ビン、アピチャッポン・ウィラーセタクン、ヤスミン・アフマド、フレデリック・ワイズマンらの監督作を手がける。最新の公開作品は、稀代のダンサーに迫ったドキュメンタリー『リル・バック ストリートから世界へ』、アレクサンダー・ロックウェル監督の25年ぶりの日本公開作『スウィート・シング』。


土肥悦子|シネモンド代表

 

有限会社シネモンド代表、一般社団法人こども映画教室代表理事。1989年、映画配給興行制作会社ユーロスペースに入社し、アッバス・キアロスタミやレオス・カラックスなどの作品買付、宣伝を担当。キアロスタミの『そして映画はつづく』(晶文社刊)を企画・翻訳。1998年に金沢でミニシアター「シネモンド」を開館。2013年、東京で任意団体「こども映画教室」をたちあげ、2019年、諏訪敦彦監督とともに法人化、代表理事となる。